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馬治・さん助ふたり会 ぎやまん寄席湯島天神編第95回

3月6日 湯島天神参集殿2階

馬治師匠とさん助師匠が真打昇進した年から始まった二人会、一年ぶりの開催で三回目となる。どうやら、今後も続いていきそうな感じ。

同期の二人、その芸風の違う二人のコラボの妙が発揮される落語会。一回目、二回目のときも感じたのが、気の置けない二人ならではの、ゆるくて自由な雰囲気が漂う落語会なのだ。普段あまりマクラをふらない馬治師匠が、この日もたっぷりの身近なエピソードを語ったマクラ。こんな師匠を観られるのもこの会ならでは。

今回は翌日が馬治丹精会ということもあってか、前回よりも少ない観客。

馬治ファンとしては恥ずかしい話だが、私にとってこの日が今年初めての馬治師匠の高座なのだ。落語会の打合せなどで顔は合わせていたので、何となく聴いている気になっていた。この日と翌日の丹精会、二日続けて馬治師匠にたっぷりと浸るのだ。

林家たま平「一目上がり」

前座は正蔵師匠の息子さん。落語を聴くのは初めてかも。勢いもあるしはっきりした口跡もいい。江戸弁もらしく聞こえる。さすが、門前の小僧だ。ぽろっと話したクスグリが大受けして、本人もビックリ。将来が楽しみ。

金原亭馬治「片棒」

今年初の馬治師匠、拝見するのは鹿芝居以来。どうやら体調が本調子ではないらしい。

マクラでは、最近になって人生初の出来事が二つありました、ひとつは花粉症デビューしたようです、とのこと。なるほど見た目にも、どこか具合が悪そうだ。

その花粉症でぼっーとしている所為か、数々のしくじりがあった。先日、井戸の茶碗をかけたとき、仏像の中から本来は五十両出るはずが、なんと、思わず五百両を出してしまった。そのため、しかたなく、最後に殿様が井戸の茶碗を買い上げたのは千両にもなってしまった。懐に入らないので急遽、千両箱を担いで千代田卜斎に届けにいった屑屋の清兵衛さん。この井戸の茶碗は馬治ファンとしては観たかった貴重な一席だ。

もうひとつは、車の事故だそうだ。まだ怪我がなかっただけ良かった。花粉症の初心者である馬治師匠、色々と苦労されている。そんなマクラ、笑いごとではない自虐ネタで会場を沸かせる、こんな自由で気楽なマクラを聴かせてくれる馬治師匠はこの会ならではだ。本編は、慣れた噺で咽試し。

柳家さん助「不動坊」

前回は馬治師匠がトリだったので、この日はさん助師匠がトリだとばかり思っていたが、この出番だ、また馬治師匠に花を持たせてくれたようだ。さん助師匠は花粉症の影響もないようで、普段どおりの絶好調。

今回がネタ出しの会だと勘違いして稽古されてた噺のようだ。これがさん助師匠らしさあふれる爆笑の一席。私的にも今日一番の高座。

まずは、お滝さんを嫁にもらう吉兵衛さんがかなりの粗忽者でお調子者だ。大家さんが嫁を紹介すると来たときの褒め言葉とまったく違う。こんな人に嫁さんを紹介したくない、やっぱり借金の肩代わり目当ての嫁入りかなあ、そんなレベルの吉兵衛さん。なんせ風呂屋に鉄瓶ぶら下げて行くような典型な粗忽者だ。ほんと、若手では粗忽者を演じさせたらピカイチのさん助師匠。

そして吉兵衛さんに焼もちを焼く三人組も同じような粗忽者。屋根の上では大騒ぎなのに、屋根の下での新婚さんは気づかないのか。

そんな粗忽者だらけの中でも秀逸なのが、幽霊役を務める元落語家の喜助爺さん。幽霊役がお爺さんの設定は初めてだ。これが間抜けでよぼよぼで、この噺の主役に躍り出た。耳が遠くて演技指導も上手くいかずにボケまくる。なのに幽霊のセリフはきっちりとこなし、さすが元芸人って感じ。私にはこの喜助爺さんがツボにはまった。

仲入り

柳家さん助「ぞろぞろ」

こんな短いけどのんびりした噺も凄くいいのだ。こちらも茶屋を営む二人がお爺さんとお婆さん。その民話の世界のような長閑で素朴な風景が広がって、何気ない人間の営みからファンタジーになっていく楽しい噺だ。

そんな素朴でノンビリした世界でもさん助節は健在。お爺さんの驚きの表情、うぁああ〜という叫び、これを自らも「迫真の演技!」と表現、その可笑しさは何とも言いようがない。天才と呼ぶしかない。

金原亭馬治「抜け雀」

変わって、こちらは秀才派の馬治師匠。二席目のマクラもノンビリ。同じくネタ出ししていると思って稽古してきたのが柳田格之進だったようで、実際はネタ出しされていなかったので、どうしようと楽屋でさん助師匠と話し合い。さん助師匠から、柳田という噺はネタ出しでお客さんとも合意のうえでやる噺です、それをネタ出しせずにいきなりやってはいけません、そう言われたので、ネタを変えます、とのこと。

そして旅の話、駕籠の話、駕籠かきの話がはじまる。急に変更してはじめた演目が抜け雀とは、お客さんも嬉しい驚き。

ときおり咳もでていて、辛そうな様子ではあるが、力が抜けていてふわふわした感じが旅籠の主人相模屋にぴったり。気が弱くて人の良い亭主で、性格のきつい女房と好対照。一文無しの絵描きの侍も、力が抜けている分、悪気を感じない。

しかし、体調の影響か、いつもよりやや早口になっているようだった。万全の体調でないなか、演目を変更して語り切った馬治師匠の底力を感じた一席だった。